社長とは本当に自由な仕事なのか【第81話】

社長という立場に、
自由なイメージを持つ人は多い。

しかし実際には、
会社を背負い続ける重圧と責任がある。

経営者とは、
想像以上に孤独な仕事なのかもしれない。

責任を背負い続ける“経営者”という生き方

創業社長、
オーナー社長、
世襲社長、
やとわれ社長、
サラリーマン社長等々、
社長業もいろいろだ。

以前、
社員の宴席に社長が同席した。

そこで私は社長と話す機会があり、
こう言われた。

「君、社長をやる気はないかね」

もちろん冗談で訊いてきたのだが、
当時の私は物書きになろうなどとは、
考えてもいなかったので、
やってもいいな、
と思った。

しかし酒の席で社長が口にしたとはいえ、
変な議論を戦わせても面倒臭くなるので、
「そんな大変な仕事は、まっぴらです」
と答えた。

私は、
社長が

「覇気がないなあ」

という意味の発言をしたように記憶しているが、
間違いなく私の答に満足していた。

理由は、
大変だと思われている満足感がひとつ。

もうひとつは、
本人は意識していなかったと思うが、
オーナーで世襲の社長であれば、
自分から「もう、やめた」というまでは、
絶対に社長業を追われる心配はない、
という盤石さの無意識な確認だろう。

しかし上場している会社の社長であれば、
いつその座を追われるか分からないのが、
本来の姿であろう。

会社の業績はもとより、
社員の不祥事などによって、
辞任しなければならないリスクは常にある。

株主に対し、
社長の責任を果たせない場合もしかり、だ。

私たちの社長は、
オーナー社長で自由の身とはいえ、
七十すぎにも拘­わらず、
毎日電車通勤し、
社員たちを鼓舞している。

経営に対するエネルギーを持続させている。

これは大変なことだ。

ほんとうに、
私などにはできないかもしれない。

せいぜい、
自分独りで社長から事務員までこなせる規模の
生業を営むしかない。

つまり、
物書きになるしかない、
と改めて思う。

企画、購買、生産、経理から営業販売まで、
一貫して独りでやるしかない。

執筆日:1998/07/28(火)

編集後記

どんな立場にも、
それぞれの苦労があります。

外から見える姿だけでは、
本当の重圧は分からない。

だからこそ、
人の仕事を簡単に判断してはいけないのだと思います。

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