鉄と磁石 組織に必要なのは同じ方向だけなのか【第116話】

組織では
「同じ方向を向くこと」
が大切だと言われます。

第116話は、
「鉄」と「磁石」を題材にしながら、
組織と個人の在り方について考えた一篇です。

同調することと、
自分を磨くこと。
その両方の大切さが伝わってきます。

組織にも個性は必要である

本日の朝礼で、
社長が良いことを言った。

鉄と磁石の違いは、
鉄の分子はバラバラだが、
磁石はみんな同じ方向を向いている。

だから我社も全員が磁石になって、
力をひとつにして向かうべきだ、
と。

現代社会の、
あらゆる組識に
必要なことなのかもしれない。

今の会社には、
ぜひとも必要な精神論なのだが、
世の中磁石ばかりでは
おもしろくも何ともない。

鉄もあるから、
磁石が生きてくるのであって、
すべて磁石であっては
何のありがた味もない。

組織のなかでは、
磁石のように
各自が皆と同じ方向を向かなくてはならない、
ということは理解できる。

しかし私は、
磁石になりたいとは思わない。

たしかに役立ちそうだけど、
面白味などまったくないような気がする。

鉄は、
始終使っていないと錆びるし、
腐って朽ちる。

いかにも人間のようではないか。

それこそ切磋琢磨しないと、
錆ついて身動きがとれなくなる。

しかし鉄は鍛え方しだいで、
芸術品にまでなりうる。

日本刀など、
最たるもののひとつだろう。

しかし刀も手入れを怠ると、
それこそ鞘から抜けなくなってしまう。

磁石は、
工業製品の世界では大活躍するが、
芸術品になった話を聞いたことはない。

だから私が望むのは、
鍛えられた鉄になることだ。

どんなに鍛えあげていようとも、
油断はできない、
という感じになる。

世の中磁石だけでは画一化され、
プラスとマイナスが違っても、
誰も分からず、制止せず、突っ走って、
とんでもないことになりかねない。

そんな危うさを私は危惧する。

今の日本では鍛えられた鉄が少ないので、
せめて磁気を帯びた鉄にならないと、
錆ついて
すぐにも動けなくなってしまいそうだ。

人間の営みとは、
錆つかないよう日々努力する行為なのかもしれない。

執筆日:1998/09/01(火)

編集後記

組織には協調性が必要です。

しかし、
それだけでは
新しい発想や変化は生まれません。

自分自身を磨き続けながら、
周囲とも力を合わせる。
そのバランスの大切さを改めて考えさせられました。

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