錆(さび)を防ぐ「防錆剤(ぼうせいざい)」がある。
もし人間の頭にも、
防錆剤が使えたらどうなるだろうか。
1998年の私は、
そんな奇妙な想像から、
固くなった頭や錆びついた考えを柔らかくする
「脳細胞の補修剤」
を思い描いています。
固くなった頭を柔らかくする「防錆剤」
防錆(ぼうせい)剤というものがある。
錆(さび)を防ぐものである。
錆ついてしまった物でも、
吹きつけることで、
それ以上錆びないようにしたり、
錆を取ったりもする。
機械などに使うものであるが、
脳細胞に使えたらいいな、
と思う。
頭の固い連中にシュッと一吹き。
錆ついた頭の脳細胞が蘇(よみがえ)る。
他人だけでなく、
自分も錆ついてきたな、
と感じたらシュッと一吹きする。
頭すっきり、
脳の回路がショートせずに回転は速くなる。
またカビ取り剤というものがあって、
カビ臭くなってきた脳細胞に、
泡を吹きかけて暫(しばら)く置いておく。
最後に水洗いをして、
カビ取り剤を洗い流す。
脳細胞のヌルヌル、ヌメヌメ感がとれて、
新品のようになり、
表面を触るとキュッ、キュッという音までする。
可塑剤という、
物質を柔らかくするものもある。
固い彼女の脳細胞に可塑剤を擦り込み、
もっと開放的にしてしまったりして。
脳細胞の補修剤が、
店頭で山積みされていたらさぞ面白いだろう。
これもご多分にもれず、
価格競争で安くなっているのだ。
すでにみんな使い飽きていたりして。
それでも生産者は売らなければならない。
そこで、
もう見飽きた二個パックや、
何の工夫も知恵もない企画品を、
次から次へと出してくる。
買物に行って、
つい衝動買いしてしまったりして。
会社の社員旅行などで温泉にでもいけば、
上司と温泉に入る機会もあるだろう。
そのときに、
上司の脳細胞を良く洗ってカビをとり、
防錆剤をスプレーして仕上げたりする。
背中を洗ってやって、
そのときに可塑剤を擦り込んで、
頭を柔らかくしてしまったりする。
錆ついた頭、
カビの生えた頭、
カチンカチンの固い頭。
いずれも脳硬化症候群である。
執筆日:1998/12/9(水)
編集後記
防錆剤から
脳細胞の「錆」を取る薬を想像してしまう。
第215話は、
そんな1998年の発想をそのまま文章にした一篇です。
仕事を長く続けていると、
考え方が固くなったり、
新しいものを受け入れにくくなったりすることがあります。
28年後の今、
この文章を読み返すと、
「頭を柔らかくしておくこと」
は今でも大切だと思います。
そして何より、
こんな馬鹿げた想像を文章にしてしまう自由さこそ、
当時の自分が大切にしていたものだったのかもしれません。
👉次回記事「第216話」はこちら
サラリーマン追放|「サラリーマン解放」と「サラリーマン追放」の違い


