たった一曲の音楽が、
人生の記憶を呼び起こすことがある。
音楽とは、
単なる娯楽ではなく、
その人の人生そのものなのかもしれない。
「朝日のあたる家」が呼び起こした人生の記憶
もうかれこれ30年以上も前になる。
『朝日のあたる家』は、
イギリスのリズム安堵(あんど)ブルース
(リズムがあって、安堵感のあるブルース・私の造語)
のグループ、
アニマルズが世界的に流行させた曲である。
人生の中で、
自分に最も感銘を与えた歌は何か
と訊(き)かれたら、
迷わずに挙げる歌のひとつである。
私が中学、高校、大学と、
バンド活動をしていたころ、
盛んに歌った曲でもある。
この曲を歌っていると、
なぜか涙が出てくる。
旋律もさることながら、
電気オルガンの奏でる物悲しさは、
原曲の何たるかを物語っている。
さすが当時全盛を誇ったバンドだったのだ、
といまさらのように思う。
私は詩の内容を詳しくは知らない。
耳に入った単語を自己流で解釈し、
エリックバードンのボーカルを
全身で受けとめるようにして聴いた。
そうすると自然に、
むかし日本でもよく見られた家族の姿
が浮かんでくる。
のんだくれの父親がいて、
いつも母親と喧嘩をしている。
母親が少ない家計費の中からやりくりして、
子供のために貯えた金を
父親が博打(ばくち)、酒代に使ってしまう。
家の中ではいつも罵声(ばせい)が飛び交って、
疲れて眠りにつくまでは落ち着かない。
そんな、
貧しくてどうしようもなかった生活。
それでも皆
逞(たくま)しく生きていた。
それでもなぜか明日を信じることができた。
そんな時代を彷彿(ほうふつ)させて、
涙が出たのかもしれない。
今はたしかに物質は(豊かとは言わない)
溢(あふ)れている。
反比例するように、
一人一人の火花は見えなくなってきている。
自分が火花を散らすものを探そうともしない。
私は火花を散らせるものに出会ったようだ。
火花をより大きく散らすために、
千日の準備期間が与えられている。
執筆日:1998/07/17(金)
編集後記
人には、
人生を変える一曲があります。
それは時代を超えて、
自分の中で生き続ける。
音楽の力とは、
そういうものなのかもしれません。
👉第71話はこちら
ビートルズはなぜ人生を変えたのか|独立心という“直球”を受け取った日々

