人生には魅力的な誘いが訪れることがあります。
しかし、
本当に大切なのは「どの道を選ぶか」。
第152話では、
作家を志すきっかけとなった出来事を
振り返りながら、
自分らしい道を選ぶ決断について綴っています。
近道ではなく、自分の道を選ぶ
何しろサラリーマンだけにはなりたくない、
と思いながら、
すでに25年をすごしてしまったのだ。
途中何年か
友人たちと会社をやったりもした。
けれども出資をしていたわけでもなく、
私の立場はサラリーマンと何らかわりがなかった。
もともと嫌っていたとはいえ、
人生の半分以上もサラリーマンをしていれば、
もうどうでもいいや、
とか、
嫌っていたことすら忘れてしまう。
そんな中で私は、
常に燻(くすぶ)っていたのだ。
サラリーマンから足を洗いたいと思いながら、
折りに触れてサイドビジネスを探っていた。
そして、
ある射幸心を煽(あお)るビジネスへの誘いが
きっかけとなって、
私の休火山は突然爆発した。
誘われたビジネスは
マルチまがいで、
ある程度のレベルにゆけば、
あとは印税生活のようになる、
というふれこみだった。
考え悩んだすえ、
結局は射幸心を煽って、
誰かがしあわせでなくなる。
そうならないと成立しないビジネスだ、
と判断して止めた。
不思議なことにあきらめた瞬間、
印税収入の道には小説家があると思った。
同じ印税生活でも、
自力でもぎ取るものだし、
誰も不幸にはしない、
と憑(つ)かれたように書き始めた。
突然素晴らしいアイデアが
生まれるわけではなく、
悩みに悩み、
あきらめかけて頭が空白になったとき、
ふっと生まれる、
と聞いたことがあるが、
まさにそんな感じだった。
それにしても、
小説家とは考えてもみなかった。
学生時代には漫画家、
シンガーソングライターになる可能性は
あったかもしれないが、
48歳にもなって小説家を目指そうとは。
たぶんむかしの知り合いは驚くだけだろう。
それだけに、
小説家になろうとした動機はなんですか、
と人から問われたら、
私自身未だにはっきりと返答できない。
執筆日:1998/10/07(水)
編集後記
『動機の分析』は全4回で構成しています。
作家を志した背景や、
『サラリーマン千日解放』という
タイトルに込めた思いを綴っています。
ぜひ、
第151話から第154話まで
続けてお読みください。
👉第153話はこちら
動機の分析(3)|夢だけでは前へ進めない

