ウォークマンが教えてくれたこと【第108話】

ウォークマンの登場は、
多くの人の音楽の楽しみ方を変えました。

第108話では、
その便利さだけでなく、
「発想を実現すること」
の難しさについて書いています。

良いアイデアを持つことと、
それを形にすることは
全く別なのだと考えさせられる一篇です。

思いつくだけでは形にならない

私は固有名詞を
あまり使用したくない。

ウォークマンは
ソニーの登録商標である。

でも、
ハンディ・ステレオ・テープレコーダー、
などと書いてしまったら、
戦時中の、
外国語を無理やり日本語に翻訳するような
陳腐さになってしまう。

サラリーマンで、
ウォークマンの世話になっている人は結構いる。

発売当初、
使用者は圧倒的に若い人が多かった。

しかし最近では、
年配の人もかなり増えてきたようだ。

発売の四、五年前に、
私はマイクロカセットレコーダーを、
さながらウォークマンのように使っていた。

自分で作った
両耳で聞けるイヤーホンで
音楽を聴いていたのだ。

だからウォークマンが世に出たときは、
えっ、と思ったものだ。

また私は高校生のとき、
作曲に熱中していた。

しかし楽譜が書けなかったので、
作った曲をテープレコーダーに録音していた。

次第に高度な録音をしたくなり、
当時では珍しい二重録音のできる
テープレコーダーを買った。

元々英語学習の録音機器であった。

楽器演奏を録音してから、
歌をかぶせるように録音できるのである。

つまり、
カラオケのはしりである。

カラオケがビジネスとして世に出る、
七、八年前のことだ。

そのとき、
いつかこういう歌の入っていないレコードで、
歌を歌う日がくるだろうと真面目に考えていた。

しかしウォークマンにしても、
カラオケにしても、
私自身で事業化はしなかった。

やはり実際に自分でやらなければ、
あとから何をいってみてもまったく価値がない。

私が作家になろうと決めた、
大きなきっかけのひとつに、
「私は小説にできるくらい経験も豊富だし、
 人の生き様もみている」
とある人に言ったら、
「それなら小説にしてみたら」
と返されたのもある。

執筆日:1998/08/24(月)

編集後記

アイデアは
誰にでも思いつくことがあります。

しかし、
それを行動に移し、
形にできる人は決して多くありません。

この一篇を読み返しながら、
「やってみること」
の大切さを改めて感じました。

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