プラス思考だけでは生きられない【第91話】

書店へ行くと、
「プラス思考」をテーマにした本が
数多く並んでいます。

前向きに考えれば人生はうまくいく。

そんな言葉に励まされた人も多いでしょう。

しかし人生は、
本当にプラス思考だけで
乗り切れるものなのでしょうか。

今回は、
プラス思考という考え方について
改めて考えてみます。

人生はプラスとマイナスの綾でできている

ここ二、三年、
プラス思考を話題にした本が良く売れている。

何事も前向きにとらえていけば、
あなたの前に敵なし、
脳からモルヒネが出て積極的になれる。

とかなんとかいって、
一貫してプラス思考
というテーマを守りながら、
だらだらと何ページでも書いている。

また、
似たような本の多いこと。

しかも
佳作の小説よりも
何倍か売れたりしている。

ただし、
人生は、
プラスのことばかりではない。

いつもいつも
プラス思考が維持できたら、
その方がかえっておかしいかもしれない。

そして、
そんな人間ばかりでは
おもしろくもなんともない。

自然も荒れたり、
静かだったり、
明るかったり、
暗くなったり、
寒かったり、
暖かかったり、
私たちが考える
プラスとマイナスの綾(あや)である。

なにも
プラス思考だけがすべてではないだろうが、
「マイナス思考の勧め」というような本は、
一冊も店頭ではみたことがない。

あたり前だ。

私が編集者や本の企画者であっても、
そんな本は敢(あ)えて出版しようとは思わない。

また、
販売者であっても扱わないだろう。

単純に、
売れない、
と思うからだ。

何年か前に、
脳のことを書いた本が爆発的に売れた。

なにしろ私の母が持っていたくらいだから、
三百万部売れたというのも
まんざら嘘ではないかもしれない。

私はたまたま
作者の講演会を聴きに行く機会があった。

彼は医師で、
毎日のように全国を講演して回っているという。

診療はどうなっているのだ、
医者が本業ではないのか、
と思った。

講演終了後、
受付で作者経営の
人間ドッグ医院割引券を配っていた。

後日行ってみると、
怪しげな病院で、
検査終了後、
病院が経営するという
会員制クラブの勧誘をされた。

プラス思考とは、
守銭奴思考のことか。
と、
踊らされた私はマイナス思考になった。

執筆日:1998/08/07(金)

編集後記

人生には順風満帆な時もあれば、
思い通りにいかない時もあります。

そのどちらも経験するからこそ、
人は成長するのかもしれません。

私自身、
プラス思考だけでは説明できない出来事を
数多く経験してきました。

だからこそ、
人生は単純ではなく
面白いのだと思います。

👉第92話はこちら
マイナス思考は本当に必要なのか|プラス思考を支えるもう一つの視点