「正直が一番」
と言われる一方で、
「正直者は馬鹿を見る」
という言葉もあります。
第138話は、
落とし物を例にしながら、
本当の正直さとは何かを考えた一篇です。
答えが一つではないからこそ、
読む人それぞれに
問いを投げかける内容となっています。
本当の正直さとは何だろう
例えば公の場所で、
人の忘れ物、
もしくは落とし物を発見したときに、
どういう処置をしたら正直者といえるのか。
1.ここら辺りに忘れたろうと、
慌てて取りに戻ってくるかもしれないから、
そのままにしておく。
2.忘れ物を交番等に届ける。
3.内容をあらためて、
金品はいただき、
それ以外は元の場所に残しておく。
4.同じく内容をあらため、
金品が入っていたら交番等に届け、
入っていなければそのままにしておく。
5. ……
様々な対処の仕方があるだろう。
一般的には2番が正直者だ、
と思われている。
3番はまずいよ、
という人は多数いるかもしれないが、
発見した本人にとっては、
自分の気持に一番正直といえる。
金品をいただくのは、
発見した人の余得であり、
忘れたり落としたりした人への戒めである、
と。
こんな身勝手な解釈をする人は
少ないとは思うが。
社会的に正直者となるのか、
それともあくまでも
自分に正直に生き抜くのかでも、
行為はかなり違ってくる。
ことわざにも、
「正直の儲けは身に付く」
という何事も正直にやりなさい、
というものから、
「正直貧乏横着栄耀」
しょうじきびんぼうおうちゃくえよう:
(誠実で正直な者が報われず、
ずる賢い者が得をして栄える)や、
「正直も馬鹿のうち」
というように、
正直者を馬鹿呼ばわりするものも少なからずある。
現代でも、
馬鹿正直、
正直者は馬鹿をみる、
という
必ずしも正直が正しいとはいえない言葉
も残されている。
サラリーマン生活でも、
正直に振る舞って馬鹿をみることがある。
しかしそのときどきで、
正しかったのは何か、
判断に苦しむことが多いのはなぜだろう。
それだけ複雑な環境になってしまっている、
ということだろうか。
執筆日:1998/09/23(水)
編集後記
正直さとは、
単にルールを守ることだけではないのかもしれません。
相手を思いやること、
自分の良心に従うこと、
その両方を考えながら行動すること
が大切なのだと思います。
今でも簡単には答えが出ないテーマだからこそ、
考え続ける価値があると感じました。
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