なぜ人は無言になるのか【第57話】

人は、
なぜ無言になるのだろうか。

言葉を失うのは、
考えがないからではない。

「言っても無駄だ」
そう感じた瞬間に、
人は口を閉ざしてしまうのかもしれない。

サラリーマン社会にある諦めの空気

「この人に何を言ったって解ってもらえない、
 話すら聞いてくれようともしない、
 と思い込むと、
 その人に対して私たちも無口になる」
と、ある落語家が言っていた。

まさにその通りだと思う。

サラリーマン社会には、
上下の関係がある。

何十年もやっていると、
そういう人間が上にも下にもいるのに気づく。

部下に対しては、
言っても解らないからおれがやってしまおう。

上司には、
言っても解ってもらえないから
口答えするのはやめよう。

何か問われても、
口ごもったり、
うまく説明できなかったりして無言になる。

いずれにしても中間管理職は割りを食うようだ。

しかし、
言いたい放題言えないまでも、
サラリーマン社会で何も言わず、
無言になってしまうのは損だ。

私などは口下手なので、
矢継ぎ早に問われたりすると、
何が何だか分からなくなり、
口ごもり、無言になってしまう。

すると、
あいつは何も考えのないおとなしい奴だ、
という烙­印­を押されてしまう。

そうではなく、
「あなたは頑固で、
 私が言うのを聞こうともしない。
 だから何を言っても無駄だと思い、
 何も言わないのですよ」
とは言えない。

日本では文句を言わずにやる、
という観念があった。

また、
不言実行という言葉のように、
公表せずに物事を成し遂げることは、
日本古来の美徳の極みであり、
カッコイイことの代表であった。

ただ、

無言でいるのは良くない。

できる限り声を出して、
気持良く仕事に従事した方が良い。

そうすれば、
自分自身にとっても
ストレスがたまらないから。

しかし、
私は「サラリーマン千日解放」を
書いていることは誰にも言っていない。

達成するまでは絶対人に言えない。

無言である。

執筆日:1998/07/04(土)

編集後記

本当に伝えたいことほど、
簡単には口にできないものです。

だからこそ、
無言の中にも、
その人なりの思いが隠れているのだと思います。

言葉にすることと、
黙ってやり遂げること。

その両方に意味があるのかもしれません。

👉第58話はこちら
なぜ安定は幻想になったのか|これからの働き方を考える