くちづけ【第187話】

毎日の小さな習慣が、
夫婦の関係を支えることがあります。

1998年の私は、
妻との「くちづけ」をきっかけに、
愛情表現とサラリーマンの仕事との距離
について考えています。

夫婦の愛情と仕事を切り分ける

私が妻と一緒になってから、
あと数ヶ月で満二十年になる。

この二十年間、
毎日彼女にしてきたことがある。

朝出がけに、
くちづけをすることだ。

どんなに忙しくてもかかさず、
くちづけという­挨拶(あいさつ)をしてきた。

感謝の気持ちを込めて、
また、いまは何があるか分からないので、
万一の挨拶になるかもしれない
という気持ちも含めて。

このことを、
部の懇親会で話したら皆から冷やかされた。

愛情の具体的な表現であり、
最も簡単な方法である。

こんなに手軽な、
それでいて、
互いの愛情表現を確実にできることを、
なぜ他人(ひと)はしないのだろう。

私は欧米人を礼賛する者ではない。

しかし、
出がけのくちづけだけは
すばらしい習慣だと思っている。

愛情の表現は、
恥ずかしがっていたらできない。

結婚して二十年もたったら、
何もいまさらというかもしれないが、
そんなときにこそ、
具体的な愛情表現が必要なのだ。

毎日必ず夫婦生活を営んでいるというのなら、
何も出がけにくちづけでもないかもしれない。

しかしそんな夫婦にも、
朝のくちづけは
さらに効果てきめんとなるだろう。

喧嘩をしているときでも、
自然と出がけにくちびるが出てしまう習慣は、
夫婦円満のこつになるかもしれない。

サラリーマンにも、
ストレスにやられないで、
会社で円満にやるコツがある。

会社を出たら、
一切仕事を忘れることだ。

意識的に会社と自宅を、
キッチリ分けることだ。

そうすると、
仕事を忘れることができる。

中途半端にでなく、
完璧に忘れることだ。

自分で起業しようと思っている人は別だが、
たかだか、なっても役員どまりだ。

役員どまりのサラリーマンなら、
土、日は、
仕事に別れのくちづけをしたほうがいい。

執筆日:1998/11/11(水)

編集後記

夫婦の「くちづけ」から始まった話が、
最後には仕事との別れ方にたどり着きます。

2026年の今読んでも、
家庭と仕事を
きちんと切り分けることの大切さは変わりません。

毎日の小さな習慣が
人間関係を支えるという点も、
改めて考えさせられます。

👉次回記事「第188話」はこちら
サラリーマンの致命傷|サラリーマンは会社の常識の中で生きる