直行直帰は本当に楽なのか【第94話】

直行直帰という働き方は、
会社員であれば
一度は羨ましく感じたことが
あるかもしれません。

会社へ寄らずに仕事を始め、
そのまま帰宅する。

一見すると自由に見える働き方ですが、
その裏には見えない苦労もあります。

これは、
そんなサラリーマン社会の
人間模様について書かれた一篇です。

サラリーマンが抱く羨望と誤解

事務仕事や工場勤務の人には、
あまりなじみのある言葉では
ないかもしれない。

直行直帰というのは、
営業の経験者であればなじみ深いだろう。

会社によって
呼び方は異なるかもしれないが、
似たような漢字を使用していると思うので、
意味は良く分かると思う。

朝、会社に出勤せず
直接取引先や仕事場へ行き、
夕方、会社に戻らず
直接自宅へ帰ってしまうことをいう。

かつて直行直帰は、
周囲には
いかにも仕事を一生懸命やっている
ように映った。

しかし現在では、
なにをそれほど朝早くから
行かなければならないのかとか、
朝寝坊したいから
直行しているのではないかとか、
挙げ句の果ては、
本当に客先へ行っているのだろうかとか、
周りでいいだす始末だ。

実際、
これらはすべてあたっている。

そうしてきた元営業マンが、
立場が変わると
自分がしてきたことは棚に上げてものを言う。

私は、
直行直帰という言葉には、
大変だなあ、
という思いと、
楽(らく)そうだな、
という
相反する思いが重なっている。

考えてみると、
サラリーマンには
そういう言葉が
たくさんあるのではないか。

昇進、
というと
昇給していいな、
という思いと、
これから責任が重くなって
大変だなあという思いが重なる。

異動、
というと
マンネリ化した仕事から抜け出せていいな、
という思いと、
新しい仕事をまた一から始めるのも
大変だなという思いが重なる。

サラリーマンでさえ、
そんな状態なのだから、
ましてや、
サラリーマンを辞めて独立するのは、
並大抵の精神力では、
持たないと思う。

でも、
サラリーマンから
足を洗いたいと思うのは、
一体何なのだろうか。

自分の存在を
きちんと確認したいからか。

執筆日:1998/08/10(月)

編集後記

働き方は大きく変わりましたが、
人の心理は
あまり変わらないのかもしれません。

他人の立場は良く見え、
自分の苦労ばかりが目につくものです。

改めて考えてみると、
そんな人間らしさを感じます。

👉第95話はこちら
妻の誕生日に思う|人柄は日々の積み重ねに表れる