満員電車【第26話】

かつて取引先の英国人を
無理やり
朝のラッシュアワーに
引っ張り込んだ事があります。

彼は、いきどおって言いました。

こんな経験は一生に一度でたくさんだ!
と。

ラッシュアワー・英国人の感想

サラリーマンに満員電車。

一番良く似合う言葉である。

「ラッシュアワーの満員電車」は、
すぐにサラリーマンという種族を連想させ、
重い厭(いや)なイメージがオーバーラップする。

独立心の旺盛な若者が、
最もなりたくない種族の代表に、
サラリーマンを位置づけているのも、
うなずけなくはない。

昔、私が取引先の親しい英国人に、
「いいものを経験させてやるよ。
 日本のビジネスを知る上で大いに役立つはずだ」
といって朝8時過ぎ、
わざわざ山手線のラッシュアワーに引っ張り込んだことがある。

昼食時、
ラッシュアワーの感想を聞いた。

彼はかなり真面­目な顔をして、
こんな経験は一生に一度でたくさんだ!
と憤慨していた。

ある意味ではすごいというか、
馬鹿げているというか。

なぜなら、
一生に一度でいい経験を、
我々は毎日やっているのだから。

それも文句もいわずに続けているのだから。

私は、
「ラッシュアワーの満員電車」がなかったら、
若者のサラリーマン支持率も、
もう少し高くなるのではないかと思っている。

もっと良い仕事ができ、
もっと高年齢まで働けるようになるのではないか、
とも。

風邪で高熱を出し、
二、三日寝込んだとしよう。

やっと回復し、
朝のラッシュアワーに臨むと、
とても疲れる。

そう感じた経験をお持ちの方は多いと思う。

それほどエネルギーを消耗するのが、
満員電車だ。

スタートから、
疲れた身体­で机に向かって、
良い仕事などできるわけがない。

しかしどうにもならないのは、
横並びに安堵­を覚える日本人の国民性だ。

そのまま
会社という法人にも乗り移っている。

一時叫ばれた
時差通勤を実施している会社は、
少ない。

未だに都会のサラリーマンは、
横並びの安堵と引き換えに、
満員電車に疲れきっている。

執筆日:1998/06/03(水)

【編集後記】

コロナ禍の時は、
一時ラッシュアワーも
収まったかのように見えました。

しかし今ではまた元に戻っているようです。

本来仕事で発揮すべきエネルギーを
朝晩のラッシュアワーで費やすのは
もう止めたほうが良いのでは……

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光陰矢のごとし|時の長さは変わりなし