単身赴任【第32話】

単身赴任。

個人個人によって
受け止め方はかなり違うでしょう。

ある日突然、
上司から単身赴任を命じられたら
あなたならどうしますか?

悲劇

この­歳(48)になって、
単身赴任をしていないと、
珍しいサラリーマンのようにみられる。

しかし単身赴任があたり前・常識
となっている社会こそ、
異常なのではないだろうか。

単身赴任をめぐる悲喜劇と書きたいが、
やはり悲劇と書かざるを得ない。

単身赴任をめぐる悲劇は、
枚挙にいとまがない。

もちろん一般的に言えば、
このリストラ時代、
単身赴任を嫌って
勤められる会社はそうそうはない。

しかし、

誰もがあたり前と思うことに、
­物凄く恐ろしい社会の歪みがあると思うのは
私だけであろうか。

現在日本の社会では、
サラリーマンが圧倒的に多く、
供給過多である。

経営者は当事者の都合など考慮せず、
あたり前、
むしろ踏み絵でもあるかのように強いる。

また、
受ける方もあたり前のように赴任する。

時には出世の条件として、
ありがたく戴くように
受けているサラリーマンすらいる。

千日解放でサラリーマンがどんどん減り、
需要を大きく下回るようになったら
どうだろうか。

雇用側の態度も、
転勤・単身赴任はありません、
と手の平を返すように変わるだろう。

ひるがえって現在のサラリーマンは、
働く者の権利主張を何もしていないに等しい、
ということだ。

「会社があって人がいる」
のではなく、
「人がいて会社がある」
という言葉は、
経営者だけでなく
いまや労働者からも忘れ去られている。

単身赴任最大の悲劇は、
家族が離れ離れに暮らさなくてはならないことだ。

勿論、
家族全員で動ければ、
それに越したことはない。

しかし、
サラリーマンにも都合があろう。

できないなら辞めてもらおう、
と会社側は迫ってくる。

そのとき、
会社側の勝手ばかり言うなら、
こちらから辞めさせてもらいます、
といえるように準備しておきたい。

因(ちな)みに、
私はまだ単身赴任の経験がない。

執筆日:1998/06/09(火)

編集後記

コロナ禍では、
在宅勤務を認める企業が一時的に増えました。

しかし現在は、
ほぼ元の働き方に戻っています。

日本では、
長年続いてきた勤務形態が、
簡単には変わらないのかもしれません。

転勤や単身赴任という制度そのものが、
働く側の意思を十分に反映していない――


そんな視点は、
まだ一般的ではないのかもしれません。

👉第33話はこちら
解放感|豊かな味わい